放射線に関する公開講座に参加

今日 (2012年2月19日(日)),近所の大学で,「放射線を知る」という公開講座があったので参加してみました。
近いし無料だし,ということで散歩がてら気楽に。

内容としては,理工農医4研究科合同ということで,5人の先生が登壇され,色んな話が聞けました。特に原発事故に関連する話題に限定されていたわけではありません。
自分は勿論放射線については詳しくないので,ふーんという感じで聞くだけでしたが,とりあえず備忘録的に。

  1. 人は常に被曝している
    例えばカリウムには0.01%の割合で放射性同位体が含まれていて,バナナなんかを食べると放射能を体内に取り込むことになる。細かい数値は忘れたが,食品中の放射性セシウムの新基準などと較べても,無視できるほど小さい量ではない程度だったはず。
  2. 放射線は身近でも色んなことに使われている
    半導体改質,電線改質,注射器や手術用具の滅菌とか,色々挙げられていましたが,おや,と思ったのは,食品照射も行われているということ。滅菌など安全確保や,供給確保が目的だそうです。例えば,ジャガイモの芽止めなどに効くそうです。ただ,日本では行われていないらしい。
    「食品への放射能付着が問題になっているけど,放射線の食品照射でどのくらい放射能が残るの?」…というふうにちょっと考えてしまったのですが,それについては放射線照射では放射能は残らない,というのが答え。当然といえば当然です。
    ただ,植物の組織の破壊などが全くないともいえないようで,この辺りは寧ろ遺伝子組み換えの作物などと近い感覚なのかなと思いました。
  3. 放射線で可視化 (イメージング) やトレーサー実験などが行える
    例えば植物に放射線を当てることで,どの部分に水が行き渡っているかが可視化できる。確か原理としては流れのある H 原子のスペクトルを利用するとかいう話だったと思う。
    同様に,水田に落ちたセシウムが稲にどのように取り込まれたのか,東北を飛んでいたウグイスにどのくらいセシウムが付着しているか,なども放射線を利用して分かるということで,実際の結果の写真の紹介などがありました。
  4. 国際的な合意のある被曝の影響
    とりあえず,100 ミリシーベルト被曝するとがんになる可能性が 1.05 倍になり,それ以上の被曝は発がんの可能性がリニアに伸びていく。反面,100 ミリシーベルト未満の場合には統計的には (→広島・長崎の原爆,チェルノブイリ原発事故などの後の追跡調査の結果によると) 有意な結果は得られていないそう。これは UNSCEAR という国連の委員会が報告したことで,これが被曝に関して科学的に国際的な合意のある内容ということです。また,日本の法律もこれをベースにしているとのこと。
    勿論,なら 100 ミリシーベルト未満なら被曝してもよい,ということではなくて,100 ミリシーベルト未満についても,100 ミリシーベルト以上の場合の延長として考えて (つまり,10ミリシーベルトで発がん確率が 1.005 倍ということになる),正しくリスクとして認識する必要がある,ということだと思います。例えば喫煙や飲酒,肥満,運動不足など発がんリスクは他にもたくさんあり,それらと同列に考えるべき…と医者の立場では説明するべきと言っていました。
    よく言われることですが,放射能が少しでも付いているかもしれない野菜は食べないので食事が野菜不足になり,外部被曝が怖いので内に篭って運動不足になり…といった生活になってはそのほうががんなど健康に与える影響が大きい,という説明もありました。

といったことが印象に残りました。正直,眠っていた時間も長かったんで(笑),特に医学の先生が話した時は殆ど記憶が飛んでおります。
ただ,まあ結構参考になったなと思います。

自分などは,日頃の食べ物に放射能がどのくらい付いているか,など考えたこともなく,食品とかがれき処理とか,ちょっと騒ぎすぎじゃないの? と思うことも多いです。
その直感は概ね間違っていなかったかな,というのが放射能汚染に関しての今回の感想です。
ただまあ,小さい子供がいるとか,原発から近いとか,個々の事情があるし,放射能なんて限りなく少ないほうがいいのは確かなので,神経質になるのも分かります。結局,個人の問題で,マスコミ等は正しく騒いでくれと思います。
ソフトウェアのテストで,完全にバグがないのを証明するのは事実上不可能で,実際のテストではどれだけコストをかけられるかが問題,というのと似ていますね。放射能ゼロの野菜を10倍の値段で買うに値するとその人が思えばその値段で買えばよいのだし。
ただ,テストしなくても正しく動くことがあるのと同じように,何の検査もしないで「大丈夫です」と言うのは最悪ですが。あくまで検査の結果,定量的な放射能の量が明らかになっていないと判断はできないことになります。だから,同じ理屈で,放射能ゼロという野菜があって,それを買うのなら,その証明または主張を受け入れた結果買う,という姿勢が必要です。変な言い方ですが,放射能を気にするなら買う側にもそれなりの覚悟が必要ということがいえると思います (勿論,国の基準はどれを選んでもクリアされているという前提で,それ以上を目指す場合です)。

それと最後に,「『科学的に』といった場合にその分野で多数発表されている論文のうちどれか1つにでも述べられていれば,それは科学的根拠があるということになってしまうが,(特に昨今の放射能の分野はそうなのだと思いますが) 特定の主義・思想や政治的な思惑が絡んでいるので特定の論文に載っている主張があったとしてもそれが真に科学的とはいえない,全体として客観的に見て判断しないといけない」という話があり,これは放射能の話に限らず科学技術に関わる人間としては銘記すべきことだと思いました。

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